雨夜の星に、願いひとつ
507って、さっきの部屋だ。

正直、ちょっと嫌だなあ。でもまあ仕方ないし、目にも留まらぬ早業でドリンク置いて逃げればいいか……。

なんてグダグダと考えながらドリンクを準備していると、横から伸びてきた手がトレイを奪うようにつかんだ。


「俺、行きますよ」

何食わぬ顔でトレイを持って歩き出したのは、柴ちゃんだ。


「えっ……い、いいですよ。悪いし」


遠慮して止めても聞く耳持たず、彼の姿はさっさと階段を上がって消えてしまった。

……これはもしかして、助けてくれたんだろうか。
あっけにとられて立ち尽くすわたしに、店長が声をかけた。


「じゃあ相沢さん、先に休憩入ってくれる?」

「あ、はい……」


  * * *


スタッフルームのドアを閉めてひとりになると、疲れがどっと押し寄せてきた。
前の仕事をやめて2年近く働いていなかったから、こんな感覚は久しぶりだ。

わたしはロッカーからスマホを取り出して、パイプ椅子に腰をおろした。
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