初恋の君と、最後の恋を。
第3章
私と恋敵
17歳になっても、当たり前だけれど世界は変わらない。
いつもと同じ朝が始まる。
人通りの多い改札前で黒瀬先輩を待つ。
寝癖のついた髪を掻き上げて、大きな欠伸をしながらダラダラと歩いてくる相馬先輩も、いつも通りだ。
けれど私の相馬先輩に対する見方は変わった。
「おはよっ」
繰り出されたピースサインをいつもなら冷ややかな視線で受け流していたけれど、今日は頷いた。
「おはようございます。あの、相馬先輩」
「ん?」
朝から炭酸飲料をがぶ飲みする先輩に頭を下げる。
「雅美のこと、聞きました!親友を助けて頂き、本当にありがとうございます」
「あー、そういう堅苦しいのはいいわ」
ペットボトルで私の頭を軽く叩いた相馬先輩は手をヒラヒラさせた。
「困ってる奴がいたら、助ける。そんな当たり前のことして、お礼を言われるのはなんか違う気がするわ」
王子様。
雅美のお母さんがそう表現したくなる気持ちが分かる。
「相馬先輩がまともでビックリしました」
「はあ?俺を変人扱いすんなよ」
再び頭を叩かれたけれど、嫌な気持ちにはならなかった。