初恋の君と、最後の恋を。
視界が歪む。
私から頼んだことなのに、涙が止まらない。
彼の言う通り馬鹿な頭が、心が、
ほんの少しだけ期待していたのかもしれない。
黒瀬先輩と歩む未来があるかもしれないと。
彼はなにも悪くない。
全て私が悪いんだ。
1度も私の気持ちに応えるとは彼は言っていないし、ましてや好きだなんて言わなかった。
自分の都合の良いように考えようとしていただけだ。
酷くフッって欲しいと頼んだ私の願いを、黒瀬先輩は叶えてくれたんだ。
「……お返事…、ありがとうございます」
「これで満足?」
「はい!」
最後に黒瀬先輩の姿を目に焼き付けておきたいのに、涙でよく見えなかった。
先輩の冷たい表情も霞んでよく見えない。
「サヨナラ、黒瀬先輩」
「…さようなら」
先輩から背を向けて、逃げるように走った。
鉛のように重い足の痛みを無視して駆ける。
心の痛みだけが、残ってしまった。