初恋の君と、最後の恋を。


私の初恋は終わった。






体育祭の打ち上げの話で盛り上がる校庭を横切り、一足先に教室に戻った。


仁くんから近所のカフェにいるというメールがあり、雅美のお見舞いに寄ってからで大丈夫だよという配慮つきだ。


立派な婚約者。


大好きな幼馴染。


どうして彼だけを想えなかったのだろう。




胸焼けを起こした身体を引きずり、校門を出たところでーー背後から迫り来る足音が聞こえた。


振り返る気力はなく、歩みを進める。




「あれ?無視?」


能天気な声が、有り難かった。


泣き腫らした目を見られたくなくて、前を向いたまま返事をする。



「お疲れ様です、相馬先輩」


「お疲れ!もしかして雅美の家に行くの?俺も連れってて」



私の横に並んだ彼のお願いを断るわけにはいかなかった。



「いいですよ」


「サンキュ」



相馬先輩。
あなたの親友は、とても酷い言葉を投げる人ですよ。


相馬先輩は、本当の黒瀬先輩を知っていますか?


聞きたいけれど、聞けない。


私のせいで2人の関係が悪くなってしまうくらいなら、話さない方が良いだろう。

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