初恋の君と、最後の恋を。
歩き慣れた通学路。
今日ほど哀しい気持ちで歩いた日はないだろう。
告白した4月から、季節は夏に変わろうとしている。
「雅美、全然俺の言うこと聞かないんだもんな。良斗が止めてくれて助かったよ、マジで」
拗ねたように相馬先輩は、私が最も話したくない相手の名前を出した。
「助かりましたね」
「……なんか変だよ?」
顔を覗かれそうになり、素早く反対側を向く。
「どうした?」
「何もないですよ」
大雑把に見えて変化に聡い、相馬先輩には隠せないよね。
「話したくないなら無理に聞かないけど、悩んでるなら相談にのるぜ?」
相馬先輩は少しだけ早足になり、私の前方を歩き始めた。
情けない顔を見られずにホッとする。
「どうやったら黒瀬先輩を嫌いになれるか、教えてください」
あんなにも酷い言葉を受けたにも関わらず、
傷付いた心はまだ黒瀬先輩を求めている。
「フラれた?」
「ええ」
彼にとって私は友人以下の存在だ。
ある意味ストーカーみたいだったし、嫌われるのも無理ないよね。