初恋の君と、最後の恋を。
毎日毎日、飽きずに黒瀬先輩を追い掛けた。
毎朝いつもの場所で先輩を待ち、姿を見つければ好きだと伝え、放課後には一緒に帰りたいと後を追う。
少しも相手にされないけれど。
"ありがとう"とはもう二度と言ってもらえないだろうけれど。
絶対に止まらない。
進むんだ。
「黒瀬先輩!」
英語準備室の前で鈴宮先生と一緒にいるところに乗り込む。
「あなた…まだ諦めてなかったの」
鈴宮先生の深い溜息を無視して黒瀬先輩を見る。
「黒瀬先輩、今日の放課後に一緒に…ちょっと、」
話途中なのに、歩き出してしまった。
私の話など聞く価値もないような態度だ。
「あなたたち、なにかあったの?」
口元に手を当てて色っぽい仕草で首を傾げられる。
「あの優しい子が、珍しいわ。あなた、本気で嫌われてるのね」
「…まぁそうですね」
「可哀想な子」
猫撫で声で同情の瞳を向けられた。
綺麗な髪をひとつに結び、よく似合うピンクの口紅が可愛らしい雰囲気を演出していた。
何年経っても私はこんな素敵な女性にはなれやしない。
羨ましくないと言ったら嘘になる。
「それでも正直であろうと決めたので」
「若いっていいわね」
コツコツとヒールの音を響かせて立ち去る鈴宮先生だって、十分若いんですけど!?