初恋の君と、最後の恋を。
ホームルームが長引き、教室を覗いても黒瀬先輩の姿はなかった。
はぁ、帰っちゃったか…。
「ちょっと話があるんだけど、いい?」
「……」
3年のお姉様方に背後を固められていた。
怖い顔をして。
「逃げるなよ」
ぐるりと囲まれて、5対1では敵うはずもなく校舎裏に追いやられた。
ああ、上履きのままじゃない。
口を開く前に、思い切り足を踏まれてバランスを崩す。壁にあたった肩に衝撃が走った。
「黒瀬先輩に付き纏わないと約束しろよ」
「じゃねぇと痛い目に合うぞ」
中学時代を思い出す。
クラスの子たちにさげすまれ、手を上げられて、なにより心が傷付けられた。
絶望を見た気がした。
「なに笑ってるんだよ」
ああ、私ーー笑えてるんだ。
あの頃とは違うのかな。
「気の済むままにどうぞ」
もう雅美の助けを待つだけの自分ではない。
私は変わるんだ。