初恋の君と、最後の恋を。
午後には相馬先輩がひとりで来てくれた。
スポーツブランドのロゴが入ったTシャツと短パン姿で、メロンソーダーと焼きたてのベーグルを美味しそうに頬張っている。
「ごめんねー、良斗はアルバイトが忙しくて」
「いえいえ。相馬先輩、来てくれてありがとうございます」
カウンター越しに、日焼けた相馬先輩の部活の話を聞く。
どの話も面白かった。
相馬先輩の周りが笑顔で溢れているはずだ。
相馬先輩だからこそ黒瀬先輩も屈託のない笑顔を見せるのだ。
「あー、これから夏期講習だよ。サボりてぇ」
「部活に勉強に大変ですね」
「春嶋ちゃんだってアルバイトに勉強大変でしょ」
相馬先輩に言われてハッとする。
春から海外に行くことだけを考えていたけれど、これからは自分で道を選択していかなければならないんだ。
希望の大学へ受験することだってできる。
「でも良かったです。相馬先輩がちゃんと勉強してくれて。留年してでも先生を追い掛けたいと本気で思っていたらどうしようかと…」
「良斗に止められたんだ。俺が留年することになったら、良斗も留年するって言い出して」
「黒瀬先輩も?」
「ああ、アレはマジだった」
思い出したように相馬先輩は身震いした。
雅美が相馬先輩のことを頼んだからかな。
「さすがに親友を巻き込むわけにはいかねぇし、卒業するわ」
卒業。
春になれば彼らはいなくなる。
それまでに私と雅美になにができるだろう。