初恋の君と、最後の恋を。
すぐに飛行機を手配して、まだ開店していないアルバイト先への連絡は雅美に頼んだ。
空港に向かうタクシーの中で父に連絡すると、自動車と接触して倒れてしまったという。目撃者はおらず、運転手さんが慌てて通報してくれたとのことだ。
一時的な衝撃で目を覚まさないだけだというが、本当に大丈夫だろうか。
いじめを受けて学校に行きたくないと相談した中学生。たくさん話を聞いてくれた。毎日、校門まで迎えに来てくれた。
高校生になり授業についていけていないことを話すと、夜遅くまで勉強を教えてくれた。
雅美と喧嘩した時も、母を泣かせてしまった日も、見えない将来に悩んだ日も、
仁くんはずっと傍に居てくれた。
仁くんもたくさんの悩みを抱えていた。
弟を溺愛する両親と上手くいかない時期もあり、後継者問題に揉めた。
両親が亡くなった時、心を傷めて長期入院したこともあった。
両親の残した会社を守るために必死に戦った。
そんな時でも彼は私の前では笑っていた。
辛さや悩みを全て、隠して。
そんな彼の力に、私はなれていたのだろうか。
本当は少しも役に立っていなかったかもしれない。