初恋の君と、最後の恋を。
仁くんより一回り以上年の離れた会社の方々がお見舞いに来てくれた。
フルーツやゼリーの詰め合わせなどを頂いたが、世間知らずの私でも分かる程に彼らは、本気で仁くんのことを心配してきたわけではなかった。
そこには打算があった。
そのせいか仁くんは私を婚約者とは紹介せず、単なる幼馴染で統一していた。
「仁くん、疲れたでしょう」
午前中はお見舞いが途絶えず、やっとお昼になり落ち着けた。
「僕は平気。菜子こそ、外で何か食べておいで。ランチメニューでも堪能してきたら?」
「仁くんがこんな時に食欲なんてないよ」
「僕がこんな有様だからこそ、菜子にはしっかりしてもらわなくちゃ」
大変な時でさえ彼はお兄さんぶって、お財布からお金を取り出した。
「食べてきなよ」
「やだ、仁くんと居る」
「これから僕も少し仕事がしたいんだ。集中したいから、菜子も休憩とっておいで」
集中?嘘に決まってる。
そうやって優しい嘘ばかりつくんだから!
反論しても認めてもらえず、見知らぬ土地でひとり食事をした。