初恋の君と、最後の恋を。
「ありがとう」
廊下で仁くんは腰を折って深く頭を下げた。
「仁くん!?」
「こんな俺を選んでくれて」
「急にどうしたの?顔を上げてよ!」
離れてしまった手。
もう一度触れようと手を伸ばした刹那、
「僕たちは、幼馴染に戻ろう」
まるでランチに誘うかのような明るい声色で、
告げられた終わりの言葉。
顔を上げた彼は、憑き物がとれたような穏やかな笑顔を浮かべていた。
「なんで、そんなこと言うの…」
一緒に生きて行こうと、やっとブレない決意ができたというのに。