初恋の君と、最後の恋を。
先輩と目を合わせる。
何度もその目を見て好きだと伝えてきた。
発した好きに、一言一言想いを込めてきた。
今夜もまたーー全ての想いをぶつける好きをあなたに。
「好きです。黒瀬先輩が大好きです」
黒瀬先輩が仁くんの弟だからとか、仁くんの力になりたいとか、そういう想いを全て拭い去った先にはただただ、黒瀬先輩が好きだという恋心しかない。
「俺でいいの?」
真っ直ぐな目で、優しく問われる。
「黒瀬先輩が良いんです。あなたじゃなきゃ、ダメなんです」
ごめんね。仁くん。
あなたの言う通り、私は仁くんの生い立ちや今の環境に少しだけ同情していたのかもしれない。
黒瀬先輩を想うことは仁くんへの裏切り行為として捉えて、気持ちに蓋をしようとしたけれど。
仁くんが背中を押してくれたから、もう一度先輩に好きだと伝えることができた。
ありがとう。
今まで本当にありがとう。
「俺たち今日から恋人同士だね」
白い歯を見せて無邪気に笑う黒瀬先輩の子供っぽい表情に胸が高鳴る。
もっと知りたいよ、黒瀬先輩のこと。
私の知らないあなたを、見せて欲しい。