初恋の君と、最後の恋を。
そろそろ行こうかと、差し出された手を握る。
大きな手から伝わる温もりに、泣きそうになった。
都合のいい夢でも見ている気分だ。
校内一のモテ王子と、私のような普通の女子高生が恋人同士!?
ーー信じられない。
朝には夢から覚めて、現実に打ちひしがれていそう。
「明日も朝から仕込みなどお店の手伝いなんだ。一緒にいれなくてごめんね」
「い、いえ!もう十分ですから!」
「明後日の見送りにもたぶん行けないかな。埋め合わせはちゃんとするから」
「お見送りされたら離れることが嫌になってしまいそうなので、大丈夫ですよ」
すぐに会えるのに。
1分1秒さえ離れたくない。
ずっと一緒に居たい。
今夜も、ずっとーー
目的のホテルに着き、カウンターでチェックイン手続きを済ませた。
運良く同じ階の部屋が取れたため、エレベーターに乗り込む。
手を繋いだまま。
「静かだね、考え事?」
「幸せすぎて、頭が回ってなくて」
笑ってみせる。
こんな素晴らしい夜に、黒瀬先輩を困らせたくない。