初恋の君と、最後の恋を。
「というかなんで、バスケなわけ?あいつ陸上部じゃん」
なかなか戻って来ない相馬先輩を会場の正門で待つ。
「走ってるところも見てみたいよね」
「足を怪我して、しばらく大会には出られなかったんだ」
私たちの疑問に答えた、声に振り返る。
「黒瀬先輩!?」
夢かと思った。
Tシャツにジーンズ姿の人物は確かに黒瀬先輩だ。
「まだ勝負のため走れるほどに、希人の精神部分が回復していないってことかな」
「精神部分?もう怪我は完治してるんですよね」
「リハビリも終わって問題ないよ」
「それなら…」
普通に会話を始めた2人を交互に見ながら、嬉しい気持ちを噛み締める。
そうだよね、夏休み最終日だから黒瀬先輩も帰国するよね。
次会える日は始業式だと思っていたから、想定外だ。
「お待たせ!」
やっと現れた相馬先輩は、雅美の肩に手を回した。
いきなりの行動に私は目を丸くする。
大胆な…。
「良斗、間に合ったんだ」
「ああ」
「それならここからはダブルデートってことで!」
「はい?」
先輩の手を払いのけた雅美の非難の声に、相馬先輩は笑う。
「お邪魔虫は消えよう。異国の地で愛を育んだ2人のために!」
「なっ…、」
今度は私が戸惑う番だ。
私たちのことを黒瀬先輩は相馬先輩に話したようだ。
「それじゃぁ、またな!」
無理矢理に雅美の手をとった相馬先輩だったけれど、心なしか雅美の顔は赤かった。
そうだね、2人で話す良い機会だと思う。
外野がいない方が雅美もいくらか素直になれるかもしれないし。