初恋の君と、最後の恋を。
駅までの道のり。
私が他愛のない話題を振るか、黙って歩くか、どちらかだ。
黒瀬先輩から口を開くことはほとんどない。残念ながら、先輩が私に興味がないことなんて一目瞭然だ。
「食堂での先輩に正直、驚きました。先輩が嫌味を言うなんて想像できなくて」
「よく言われるけど、俺は自分に正直だから」
「そうなんですか?それなら私の前でも遠慮しないでくださいね。言いたいことがあるのなら…」
言葉に詰まる。
"それじゃぁ遠慮なく言うけど、もう俺に付き纏わないで?迷惑なんだ"ーーそう言い切られてもおかしくない。
「君が俺に嫌味を言わないから、俺も言う必要がないだけだよ。意識して言わないようにしているわけではないんだ」
彼の答えにとりあえず、ホッとした。
嫌味?
こんなにも完璧な先輩に嫌味を言う機会なんてこれからもない気がする。
反対に言われてみたい気もするけど。