初恋の君と、最後の恋を。
信号が点滅し、躊躇いなく足を止めた先輩を見上げる。
「もう少しの間だけ、一緒に居させてください」
表情を変えることなく、先輩も私を見た。
「わがままでごめんなさい」
「謝る必要はないよ」
矛盾しているって分かってる。
フラれる覚悟をしていると強がりながらも、先輩から離れたくないと思ってしまう。
先輩の優しさに付け入ることだけが、私の幸せになりつつある。
来春には日本から遠い地で、先輩を見ることすら叶わない。もしかしたらもう2度と、会話をする機会も訪れないかもしれないから。
期間限定のワガママを受け入れて欲しい。
「黒瀬先輩、大好きです」
口癖のようになってしまった告白。
"ありがとう"
そう返されると構えていたけれど、
先輩からの返事はなかった。