初恋の君と、最後の恋を。
青に変わった信号に気付き、一歩を踏み出した先輩は前を向いて言った。
「本当にどうして君は俺を好きだなんて言うんだろうね」
そうだよね。
散々好きだと愛を告白しておいて、好きになった理由やきっかけを黒瀬先輩に伝えられていない。
「そしてなにより不思議なことは、君は俺になにも求めてこないことかな」
「求めてますよ、傍に居たいって。だから一方的付き纏っているのです」
人混みをかき分けながら先輩に近付く。
そして彼のバッグを掴んだ。
「大好きなんです、先輩のことが」
求めてない?
違う。私にはあなたを求める資格がないから。
だって先輩に海外に行くことをまだ話せてない。
向こうで住む場所も、新しい学校も、既に決まっていて。
逃げ道を全て塞がれているからこそ、
日本にいる間だけは自分の意志で生きたいと思った。
自分の意志ーー私が望むものは、
黒瀬先輩、あなたです。