初恋の君と、最後の恋を。
重たくならないよう、暗くならないよう、
自分なりの精一杯の笑顔を見せる。
「先輩を好きな理由、デートしてくれたら教えてあげます」
先輩は小さく笑った。
「そっか」
「交通費から食事代まで、全部私が払いますよ?お得です!」
横断歩道を渡り、先輩のバッグから手を離す。
「どうです?」
ニコニコと笑顔を浮かべた先輩に、いつも通りの"ありがとう"と答えになっていない返事をされるかと思いきや、
「勉強を教えている中学生の女の子がもうすぐ誕生日なんだ。プレゼントをお願いされてて、もし良かったら買い物に付き合ってくれない?」
「……ぇ、」
はぐらかされると思い込んでいたため、上手く反応できなかった。
プレゼント?誕生日?
誰が誰と買い物に?
「考えておいて」
その日は、黒瀬先輩が一枚上手でした。