初恋の君と、最後の恋を。
「それで?まさか逃げ帰ってきたわけじゃないでしょうね?」
黒瀬先輩と別れた足で雅美の自宅を訪ねた。
挨拶もなく買い物へ誘われたことを興奮気味で話したというのに、雅美は冷たい視線を寄越した。
「行く返事はしたよ」
「行かない選択肢なんてあんたにあるの?」
炭酸飲料を投げ付けられ、危うく落としそうになる。
「ないけど…」
彼女の実家は小さな居酒屋を経営している。
夜はカラオケもできて、常連客で賑わう。
「雅美、冷たくない?もっと喜んでくれるかと思った」
カウンター越しに目を合わせた雅美は苦笑した。
まぁそうだよね。
雅美は黒瀬先輩を好きになってしまったと打ち明けた時でさえ、良い顔をしなかったから。
「だってあんた、もうすぐ海外でしょう?」
ほら、そうやって。美人すぎるあまり冷たそうに見えてしまう綺麗な顔で、正論を突き付けてくる。…ひどい親友だ。