初恋の君と、最後の恋を。

炭酸を一気に飲む。
走ってきたから、喉がカラカラだ。


「向こうに行く前に、未練を断ち切りたいと思って告白したけど。先輩優しくて全然フってくれないんだよ。"ありがとう"って笑ってくれるの」


優しい微笑みを返してもらえるのなら、何回だって好きだと言いたい。

あの笑顔をもっと見たい。



「あと少し良い思い出作って、最後は笑顔で別れるつもりだから」


お別れは綺麗な方がいい。
素敵な思い出のまま、サヨナラできたらいいよね。


「本当にそれでいいの?海外を諦めることだってーー」


「雅美、それ以上は言わないで」


もう決めたことだから。

何度も話し合って、最後は私も納得した。



「もしアイツが行かないで、って言ったら。その時はどうするの?」


「アイツって黒瀬先輩?…そんなことあるわけないよ」


「例えばの話!」


「……」


黒瀬先輩に行かないで、って止められたら?

そんなことは想像していなかった。


だってこれはただの片思いだから。


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