初恋の君と、最後の恋を。
2人並んで大通りを歩く。
「でも先輩、待ち合わせの時間まで後30分もありますよ?」
「君が早く来ているような気がして。結局、待たせちゃったね」
「本当に先輩のそういうところが好きで、たまらないです」
「そう?ありがとう」
黒瀬先輩は誰よりも周りを見ていて、物事を冷静に見極めている。自分のことしか考えられない私とは大違い。
ワイシャツに細身の黒いパンツ。私服も少し固めの先輩だけれど、シンプルながらお洒落に着こなしている。
全部が完璧すぎて、隣りに立つ私が浮いていないかが心配だ。
「中学生の女の子って、ませてきたところですから。可愛くて女の子らしいものをプレゼントしましょう!」
渡す相手のことを少しだけ教えてもらった。
女の子と聞いた時は、こんなイケメン家庭教師に勉強を教えてもらえていいなぁなんて、くだらないことを思ってしまったけれど。
彼女は中学で仲の良い友達と上手くいかなくなり、不登校になって半年が経ってしまったという。
だから笑顔になれるようなものを贈れたら良いな。
「彼女の好きな色とか知ってます?」
「色か…」
「じゃぁ先輩の好きな色を送りましょう」
「俺の?」
「きっと喜びますよ」