初恋の君と、最後の恋を。
第2章
私と幼馴染
あなたは全て見透かしていたんだね。
この中途半端な気持ちをーー。
深い溜息をついたところで、携帯の着信が鳴る。
真っ暗な部屋で光った携帯を手に取る以外の選択肢はないんだ。
「はい」
『連絡遅くなってごめんね』
「ううん、忙しいことは分かってるから」
耳馴染みの良い柔らかな声が届く。
『元気ないみたいだね。どうした?』
電話越しでも、私の元気のなさに気付いてしまう幼馴染。
まだ二言しか話してないのにね。
物心がつく前からずっと一緒にいたから、お互いのことがなんでも分かってしまうんだ。
「好きな人に、フラれ……」
フラれた?
ちょっと違うかな。
正確には黒瀬先輩は私のことをフッてくれなかった。
『僕という婚約者がいながら、なにやってんの』
責める口調ではなく、明るく返してくれた。
『前に話してくれた、優しい先輩?』
「そう」
『大丈夫だよ、菜子には俺がいるでしょ』
涙が溢れる。
先輩の前では流せなかった涙が、止める術なく流れていく。