初恋の君と、最後の恋を。
『来月には今抱えている案件が片付くから、帰国するよ。そしたらデートしよう』
「大丈夫?仁くんこそ無理してない?」
『恋人に逢いたいだけだよ』
「楽しみに待ってるよ!」
『また連絡するな。じゃぁな』
「うん、またね。身体に気を付けてね」
仁くんのことは好きだ。
どんな時でも私の味方でいてくれて、いつも手を差し伸べてくれた大切な存在だ。
けれどそこに"恋愛感情"はない。
仁くんは私を愛していると言ってくれるけど、私は彼を幼馴染以上には思えない。
両親が婚約を勝手に決めた時、本音を仁くんに伝えた。
そしたら彼は笑って「それでもいいよ」と返してくれたんだ。
これから先も、きっと、仁くんに対して愛しているという感情は抱けない気がする。
だからね、黒瀬先輩。
初恋のあなたは、私が恋をする最初で最後の相手だったんだよ。