初恋の君と、最後の恋を。

「なんだよそれ!」


屋上に雅美の怒号が響く。

彼女がギュッと握りしめた拳には血管が浮かんでいる。

やばい、本気で怒ってる。



「なんで付き合ってくださいの一言が言えねぇんだよ、阿呆」


「私には仁くんがいるの!」


「好きも付き合ってくださいも、同じだろうが!」


襟首を掴まれ、壁際に追いやられる。

フェンスでなく安全な壁際でホッとした。


「蹴りを着けるんじゃなかったのかよ!」


「だって先輩がーー」


「人のせいにするんじゃねぇよ!付き合って、そう切り出してフラれれば良かっただろう」


ゴツゴツした壁が背中に当たり、痛い。

眉間にシワを寄せて唾を飛ばす雅美の言い分は最もだ。


「でも、」

「あっ?」

怖すぎる…。


「中途半端な自分が悪いことは分かってる。でも先輩との未来を望むような、付き合ってなんていう発言は控えたかった。これ以上、仁くんを裏切れない」


「ちっ」


盛大な舌打ちをした後、私を解放した。



「それで?これからどうするつもり?」


「心の中がもやもやしてるけど、どうすることもできないよ」


「あと少し良い思い出作って、最後は笑顔で別れるつもりだからーー菜子はそう言ったよな?」


こくりと頷く。


「だったらギリギリまで良い思い出作れよ!恋人でなくとも友達でもなんでもいいから、離れるなよ」


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