初恋の君と、最後の恋を。
誕生日デート
ちびちびとコーラを飲む。
店の開店の準備を始める雅美のお母さんの後姿を見ながら、盛大な溜息をつく。
「ああ、やっぱり先輩が好きだよ…」
「うざい。開店までには帰れよ!」
4人掛けの席で宿題を広げているが、頭の中は数学の公式ではなく黒瀬先輩のことばかりが浮かぶ。
ここまで夢中にさせるなんて、罪な人だよね。
「え?雅美もう解き終わったの?」
目の前のノートを覗き込む。
大雑把な彼女の言動からは遠い、細く綺麗な字だ。
「今日の授業と同じ内容だから」
「えー」
停学処分でしばらく学校に来ていなかった彼女は特別授業を2、3日受けただけでもう内容を理解してしまったようだ。
秀才はこれだから羨ましい。
「いい加減教えてよ。雅美、なんで停学になったの?」
「大したことじゃない」
「だったら教えてよ」
肝心なことは話してくれない。
いつもそれがもどかしくて、今日こそは聞いてやる!と身を乗り出した。