ワケありヤクザと鈍感少女

‐ 新たな生活 ‐

[響也side]



…2年前。



俺は、大切な人を失った。

父親が死んでから俺は1人だった。

母親は俺を産んだ一年後に病気で他界、

鈴木組・2代目組長だった父親は、3年前

心臓病で他界。

当時、高校生だった妹は恋人だった

太刀川組の若頭と駆け落ち。

未だにどこにいるのか分かっていない。


当時、孤独だった俺を助けてくれたのが


組の奴らだった。

「・・・家族のことを考える時間なんかないくらい、ヤクザとしての仕事を全うしませんか。」

と、俺にヤクザの仕事を勧めてきたのが神楽坂だった。

「一生ついて行きますよ!兄貴!」

と、駆け寄ってきたのが竜騎だった。

・・・その日以来俺はヤクザとしての仕事に没頭し続け、組長への階段を着実に登っていた。

そんなある日、喧嘩で大怪我を負った俺が



病院に行った時に、担当だった看護師・

三神 紗亜弥 (みかみ さあや)に出会った。


病院の奴らは、俺のことを見るや否やコソコソと話しながら通り過ぎていく。


そんなこと慣れている。


週刊誌に

「最凶、最悪の鈴木組・組長!!」

などとでかでかと書かれているのだ。


でも、紗亜弥だけは違った。


俺に全く警戒心なく、近づいてきた。

きっとこいつは、俺のことをヤクザだと知らないのだろうと思い、

俺は自分は鈴木組の者だと伝えた。


怖がられるのはもう手馴れたものだ。



・・・が、彼女からは予想外の言葉が飛んできたのだ。


「へぇー!かっこいーーい!

・・・やっぱ、喧嘩するのって楽しいんですか?」

「・・・は?」

予想外の言葉に俺は声が出なかった。

・・・初めてだった。こんな変な奴に会ったのは。

恐らく驚きが、俺の顔に出ていたのか

「・・・どうしました?具合悪いですか?」

とめちゃくちゃ心配そうな顔をするから、俺は

「・・・お前の声が響いただけだ。大丈夫だ。」

と軽く冗談をかましてやった。

すると、その女は

「・・・ごめんなさい。

でもよく言われるんです!あははははっ」

と、少し顔を赤らめながら愉快に笑いだした。

変な奴・・・。

それが俺の紗亜弥の第一印象だった。



・・・それから怪我の治療とリハビリのため、

1ヶ月ほど同じ病院に入院することになった。

俺の担当看護師は偶然にも紗亜弥だった。

そこから俺らは毎日顔を合わせ、世間話やら、

他愛もない話をする日々。

何気ない時間がいつからか楽しい時間になった。

そんなある日、紗亜弥は自分の過去について

俺に泣きながら、淡々と話してくれた・・・。

・・・俺は体を震わせながら泣く彼女を

抱きしめることしか出来なかった。



その日以来、俺も自分の話をするようになった。

俺と似たような境遇を辿ってきた彼女に自然と心を開いていた。

・・・同時に俺は彼女に惹かれていった。

毎日見舞いに来る鈴木組の奴らとも彼女は

知らぬうちに、仲良くなっていた。

その後俺らは何回か2人で出かけるようになり、


退院してから半年後・・・



俺らは晴れて




恋人同士になった。
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