ワケありヤクザと鈍感少女
いっつも元気な女だった。

いっつも手先が不器用な俺を茶化した。

・・・でも、俺はこいつといる何気ない時間が1番好きだった。

俺が泣くと、こいつも泣く。

俺が笑うと、こいつも笑う。

紗亜弥は俺と対等に接してくれた唯一の女だった。

あいつだけは俺をずっと信じ続けた。

時折見せる悲しい顔、

目がなくなるほどの笑顔、

真っ赤っかに照れる顔、

俺は色んな表情を持つ紗亜弥が、


大好きだった。




付き合って2年たった頃、俺達は婚約した。





・・・1ヵ月後に、結婚を控えていたある日の夜。


鈴木組の因縁の相手、龍谷組・組長

龍谷聖司(りゅうやせいじ)が現れた。


あいつらのせいで…

俺のせいで・・・

俺の愛した女(ひと)は、



手足を拘束されていた俺の目の前で・・・

包丁でメッタ刺しにされ、殺された。



紗亜弥は結婚して幸せな家庭を作るために、

俺を喧嘩から遠ざけるため、

奴らの居場所を1人で探し、

何十人もの男達を前に無謀にも

たった1人で歯向かったのだ。

…最期までバカな女だった。

曲がったことが嫌いなやつだった。

「・・・響也、私を愛してくれてありがとう。

もう、喧嘩はしないで・・・

幸せになっ・・・て。」

「・・・俺だけ幸せになれるわけないだろ!


俺はお前を守れなかった・・・。」

幸せだった紗亜弥との日々はそこで終わった。


彼女は血だらけの小さな手に握りしめていた

いつも身につけていた十字架のネックレスを

俺に手渡すと、ニコッと笑って




俺の腕の中で静かに息を引き取った。


俺の力不足で・・・


大切な人を守れなかった自分への怒りが募る。

・・・最後の紗亜弥の言葉。

俺はその言葉を決して忘れることは無い。

でも俺は大切な人ひとりも守れない弱い男だ。

彼女との日々を1日たりとも忘れたことはない。

俺の心はズタズタに傷つけられ、

一日中涙を流した。

・・・それ以来、強くなるために日々努力を続け、





やがて俺は、鈴木組・組長へと昇格した。
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