ワケありヤクザと鈍感少女
俺は、沙綾の手を掴んで、強く握りしめた。

すると、沙綾は泣いてるかっこ悪い姿の俺を見て、

全然怖くない組長ですねっ

と明るく言った。

その沙綾の笑顔に俺の胸は自然と熱くなる。

(俺もしかしてこいつに・・・。)

そんな事を考えながら、沙綾をじっと見つめる。

すると、沙綾が謝ってきた。



・・・怒ってるわけじゃねーよ。



・・・そして沙綾は





鈴木組へと来る事を選んだ。


神楽坂の運転する車に乗り込むと、

沙綾は疲れたのか、

俺の肩でぐっすりと眠っている。

が、軽いので一切、肩に負担はない。

そして、運転席の神楽坂に指示を出す。

「・・・神楽坂。頼んだやつを」

「・・・こちらです。」

神楽坂から受け取った2枚のプリントには

沙綾のプロフィールが書かれている。

電話した時に調べろと頼んだものだ。

「・・・え!沙綾ちゃん、まだ高2っすか!

わっかいなぁ。いいなぁ!」

すぐ横で眠る沙綾をよそに竜騎がでかい声で騒ぐ。

「・・・竜騎。声控えろ」

「あ、すいません兄貴。」

冷静に言ったが、俺は沙綾の年齢、

経歴を見て驚きと動揺を隠せなかった。

柔道・五段。

細身の見た目からは想像出来ない。


しかも、高2でこれはかなりの実力…。


こいつは恐らく、喧嘩が強い。

さっきの華麗な技さばきは中々のものだ。

・・・目を奪われるほどだった。



その事実さえも、俺は運命だと思ってしまう。

・・・あいつも柔道やってたっけな。

度重なる偶然を俺は頭から振りほどこうと、

沙綾に目をやる。

すやすやと子供のような寝顔。

俺に完全に体を委ねている。

自分よりも11歳年下の沙綾。

しかもまだ未成年…

考え込んでいると車は鈴木組の玄関へ到着した。




・・・これが俺と沙綾の出会いだった。
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