ワケありヤクザと鈍感少女
「あ、あ、あ、蒼井沙綾・・・と申します。」
和室に通された私は50人ぐらいの厳つい男性達に囲まれながら正座をして、自己紹介をする。
「・・・ここに来い。」
優しい声で響也さんに手招きをされた私は、
厳ついお兄さん達からの視線を感じながら、
声の方へと向かう。
「この厳つい奴らのこと簡単に説明する。」
そう言うと、響也さんは1人1人のことを簡単に、わかりやすく教えてくれた。
「で、神楽坂は鈴木組の若頭で、神楽坂組の組長。
竜騎は鈴木組の舎弟頭で、今井組の若頭。
・・・まぁ、こんなとこだな。
気になった奴いるか?」
そう言われたのでとっさに前にいた男性を指さす。
「・・・俺かよ。」
誰にも聞こえないようなボリュームで、
面倒くさそうに私を見る艶のある金髪の長い髪を一つ結びしている一際目立つ男性。
見た目は中性的だが、
喋ると声がとても低く、威圧を感じる。
「そいつは、綾城 匡(あやぎ たすく)。
お前は最近若中になったばっかだったな。
・・・沙綾の世話役頼んだぞ、匡(たすく)。」
匡・・・?
珍しい名前だが聞き覚えのある名前に
「あの・・・もしかして
どっかで会ったことありますか?」 と聞く。
そんな質問に彼は
「人違いではないでしょうか?」 と答える。
(まさか・・・ね。)
「・・・ですよね。変な事聞いてごめんなさい。」
私は、そう思うことにした。
「承知しました。組長。」
少し不服そうだったが、
さっきとは違うキリッとした表情をする
匡と呼ばれた男性に私は、
「・・・よろしくお願いします。匡さん。」
とお辞儀をする。
「・・・よろしくお願いいたします。沙綾さん。」
と口では言っているものの、
組長の時とは明らかに目が違うように感じた。
「神楽坂、竜騎。
沙綾を俺の部屋に連れてってくれ。」
響也さんの命令に2人は、
「承知しました。」
「はーい。
さ!沙綾ちゃんいこー。」
と元気よさげに返事をする。
「あ、あの・・・」
「・・・あとで行くから部屋で待ってろ。
匡はここに残れ。」
「はい。」
潔の良い返事が聞こえる。
「わかった。」
響也さんの目の色が出会った時と
少しだけ変わった気がするのと同時に
何かを感じ取った私は彼の言う通りに動く。
そして、神楽坂さんは響也さんに
何かを耳打ちすると、私の方へと足を向け、
「・・・では、行きましょうか。」
とだけ言う。
「・・・は、はい。」
私は、竜騎くんと神楽坂さんに挟まれながら、
部屋へと向かった。