ワケありヤクザと鈍感少女
そんなふたりの仲睦まじいやり取りを見ながら、

「竜騎くん、彼女とかいたことないんだね。」

と冷静に聞くと、

顔を真っ赤にしながら

「・・・べ、別にいらないし。彼女とか」

と強がっている。

それを見て、神楽坂さんがまた笑う。

・・・竜騎くん、かわいい。

結構遊んでそうな雰囲気だったから、

何人もの女の子と付き合ってるのかと思ったけど

そうじゃないらしい。

・・・人は見かけによらないな。


「柊生はいーよな。可愛い奥さんがいてさ。」

私は奥さんというワードに驚く。

「奥さんって・・・

神楽坂さんご結婚なさってるんですか!」

「・・・はい。2年ほど前に。」

めちゃくちゃ微笑ましい・・・。

「神楽坂さん、お幸せに!」

そう言うと、少しだけ照れたような表情をして

「・・・ありがとうございます。沙綾さん。」

とだけ言うと、そっぽを向いてしまった。

「・・・確かに旦那感ありますもんね。神楽坂さん。

竜騎くんとはだいぶ違う雰囲気ですし。」

「・・・ちょっと!

沙綾ちゃんそれどういう意味!?」


「んー、色気が違うっていうか・・・。

神楽坂さんの方が大人っぽいっていうか・・・」

そう言うと、竜騎くんは拗ねてしまったのか

縁側に座り込んでしまった。

「・・・ご、ごめん!竜騎くん!

竜騎くんはかわいいからいずれ相手できるから!」

「それ、あんま嬉しくないんだけど?」

そんなやり取りを続けていると、


外から車のクラクションのような音がする。

すると神楽坂さんは少し慌てた様な口調で、

「・・・沙綾さん、着きました。

さて、こちらの部屋にお入りください。」

と言うと、

「・・・竜騎。戻るぞ。」

と、竜騎くんを連れて駆け足で来た道をもどる。

去り際に竜騎くんが

「・・・絶対に部屋から出ちゃだめだからね。

沙綾ちゃん。」

と言い残し、部屋の襖を閉めた。


竜騎くんからの忠告を受けた私は一人、

・・・部屋へと入った。
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