ワケありヤクザと鈍感少女
部屋の外からは誰かが、廊下を走り回る

ドタバタという音しか聞こえてこない。

・・・怖いな。

もし、この襖を破って誰かが襲いかかってきたら

どうしよう。

私がそんなことを考えていると、

数人の喋り声が聞こえてきた。

「・・・おい、組長出せよぉ。兄ちゃん。」

「お前ごときに兄貴が顔見せるわけねぇーだろ。

立場をわきまえろよ、愚民が。」

「・・・うっ」

ドタッ・・・という音とともに

「・・・あー、だりぃ。」

と、言う声が聞こえる。

私はそっと襖を開き、外の様子を伺う。

するとそこには顔も知らない男がバタバタと5人ほど倒れていた。



「・・・・・・何か用?」

私のほうを少しも見ずに、冷たく言い放つ彼は

私の世話役を引き受けてくれた匡さんと呼ばれる人だった。

「・・・い、いえ。

何か私に出来ることは」

「ない。」

きっぱりと即答される。

「・・・そ、そうですよね。

ごめんなさい。」

そして、私はこれ以上彼を怒らせる訳には

いかないと思い、襖を閉めようとした時


「あんたに何かあった時は俺の責任になる。

・・・だから、足を引っ張るような真似はよしてくれ」

と、ぶっきらぼうにそう言うと

私の目の前から姿を消した。


その後ろ姿に私は怒りと、



何故か懐かしさを覚えた。
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