ワケありヤクザと鈍感少女
ガラッ・・・。

「・・・響也さん、お風呂あがりました。

あの絶景露天風呂最っ高に綺麗で…」

作業をしている響也さんに声をかける。

すると、響也さんはゆっくりと振り返ると、

すぐに私から顔を背ける。

「・・・沙綾、上の服透けてるぞ。」 とだけ言う。

驚いた私は鏡をのぞき込む。

「・・・ほんとだ。

だから、さっき神楽坂さん・・・」

恥ずかしさでその場にしゃがみこむ。

「・・・神楽坂?」

「さっきたまたますれ違った時に・・・」

そう言うと、響也さんは少し荒い口調で

「・・・これ着ろ。」

とぶっきらぼうに言うとクローゼットから取り出したパーカーを私の方を見ずに渡す。

「・・・あ、ありがとう。」

「・・・ここから出る時はパーカー着ろ。」

響也さんの低い声に私は驚く。

「え」

「だから・・・

そんなはしたない格好で出歩くな。

ここは男しかいないんだから。」

と、小さな声で言った。

私はその言葉をはっきりと聞き取ったせいで、

顔が熱くなった。

「わ、わかった!」

私がそう元気よく返事をすると、

響也さんは少し俯いて、はにかみ、


「じゃあ、俺も風呂行ってくるから。

・・・今日は早く寝ろ。」

とだけ言うと、お風呂場へと向かった。
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