ワケありヤクザと鈍感少女
(ふぅ・・・お腹いっぱい)
「・・・1合全部食べたのかよ、まじかよ。」
「・・・すごい食欲だね...!
沙綾ちゃん。」
「・・・胃が大きいんですね。沙綾さん。」
炊飯器の米1合をぺろりとたいらげた私は
みんなに若干引かれつつ、
歯磨き・洗顔を終え、
寝癖のついた髪の毛をくしで梳かした私は
神楽坂さんに家から持ってきてもらった教科書、
iPhone、ノート、筆箱、メイクポーチを鞄に放り込む。
そして、一通りの準備を終えた私の部屋に
「・・・準備終わりましたか?」
匡さんのその一言だけが響く。
「・・・あっ、終わりました。」
「・・・行くぞ。」
すたすたと歩く匡さんの背中について行き、
ピカピカの黒塗りの高級車に乗り込む。
(昨日も乗った車だけどやっぱ明るい時に見るとすごい迫力だなぁ・・・)
そんなことを考えていると、運転席から低い声が聞こえる。
「・・・相変わらず、大食いなとこは変わってねぇんだな。
お前ほんとに俺の・・・」
そこまで言うと、
いきなり車体が大きく揺れ体が前に投げ出される。
「わっ」 と、思わず声が漏れる。
「・・・悪い。」
「私は大丈夫です。
・・・なにかあったんですか?」
後部座席から前を覗き込むと・・・
「あ・・・」
車の前には小さな黒猫が1匹眠っている。
(もしかして子猫を守るために・・・)
「・・・道路で寝るとか危なすぎだろ。ったく。」
ぶっきらぼうに呟き、そのまま車を降りると
小さな黒猫が起きないように、優しく抱きかかえ
歩道の軒に猫をそっと下ろし、撫でる。
(根は優しいんだな・・・。お兄ちゃん。
動物が好きな所は変わってないんだ・・・)