ワケありヤクザと鈍感少女
昔から変わらない優しい兄の姿に思わず笑ってしまった。

「・・・何がおかしいんだよ。

やべ、時間ロスしたな...

飛ばすぞ。」

一気にスピードを上げて学校へと車を走らせる。


「おい、着いたぞ。起きろ。」

低いお兄ちゃんの声で目を覚ます。

「・・・んんー。ありがとーお兄ちゃん。」

そういうと、お兄ちゃんは顔を私に寄せて、

「・・・その呼び方は2人の時だけにしろ。

あと、ちゃんと敬語使え。

・・・バレたらめんどくせぇから。」

「・・・はーい。」

静かに返事をして車のドアを開けると、

登校している全校生徒の視線がこちらへと一斉に向く。


(…そうだった。

私とんでもない車で送ってもらってた…)


私は思わずドアを勢いよく閉める。

「・・・なんでおりねぇんだよ。」

「だ、だって・・・外が」

そういうと、匡が外を見る。

「・・・はぁ。」

そう言うと匡はおもむろに車から降り、

「・・・ジロジロ見てんじゃねえよ。

どけよ。」

それだけ言ってドアを開ける。

生徒たちはみんな言葉通りに道をあける。

(え、え、私この状況で出されるの?え、)

「…ったく、俺が玄関まで送ってやる。」

そんなことされたら私は全校生徒にヤクザの娘だと噂になってしまう・・・

(・・・それはやだ!!)


「・・・だ、だ、だ、だ、大丈夫!です!

あ、歩けます!」

私は必死に断る。

「・・・ぐだぐだしてねぇで、行くぞ。」

私の体をふわっと持ち上げると玄関へと向かう。

「ちょ、ちょっと!?」

周りからの物凄い視線を感じた私は顔を手で隠した。



そして、玄関にゆっくりと降ろされた。
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