保健室にて
「一哉くん。今度の日曜日に映画なんてどうかな!?観たいやつがあるのっ!」
返事がない。
「ねぇってば!」

「っさい」
「え?」
「うるさいって言ってんの!」
突然彼から放たれた攻撃的な言葉。
彼がここまで感情を吐き出すことは少ない。

「ご、ごめん。なにか気に触るようなこと言ったかな...?」
「別に」
そう言い残すと彼は出て言った。
「あ、待って...」

もう一度ドアが開く。
パッと顔を見上げると、高橋先生だった。
「木村さん?」
「あ、先生...さっきわたしが一哉くんを怒らせてしまったみたいで」
先生は何かを察した顔をする。

「ねぇ木村さん。これから話すこと周りの人に言っちゃダメよ」
「だ、大丈夫です。わたし友達いないので」
パニクって訳のわからない自白をする。
先生は困った顔をしながらも続けた。

「松本くんね。実は重い病気なのよ」
「えっ?本人はただの貧血持ちだって」
「あれは嘘。彼もなかなか素直じゃないからね」
「それでね。この間病院で検査を受けたんだけど、あんまりよろしくなかったみたいなの。本人も今日は虫のいどころが悪かったのかもね」

知らなかった。そんなことは一度も言ってなかったし。
思い返せば最低だ。彼の寂しさはわたしが埋めてあげようだなんて傲慢すぎる。
彼は本当は退屈なんかじゃない!いつ病気が自分の体を奪っていくか、不安だったのだ!!

「っ!わたしどうしたら...!?」
「落ち着いて木村さん。今日はもうお互い冷静になって、また明日話せばいいじゃない」
「そう、ですね」

とりあえず今日は落ち着いて、また明日来よう。
そう思っていたが悪いことは重なるようで。
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