伝説に散った龍Ⅰ
芹「ねえ爽、桃!
今の話って…」
爽「あ、そっか、本人に聞けば」
桃「伝説とか幻とか言われんの、まじかっこいいよな!!」
笑顔で言う桃に、私も笑顔で答えた。
芹「ねえ、その噂さ
…ほんとだよ。発表する前に引退しちゃって、歌えなかった書きかけの曲がある。」
そんな私と桃に、烈が妖艶に微笑んで、
烈「決まり、だな。」
そう、呟く。
私は曖昧に苦笑しながら、マイクを手に取った。
ふーっと、大きく、息を吸い込む。
「もしも手が届いたなら────」
目を閉じれば、瞼の裏、
浮かんでくるのは、観客席。
それは、芹時代私が私が見てきた景色そのもので。
衝動的に起こるホームシックのような感じを必死に押し殺した。