伝説に散った龍Ⅰ
Ⅱ/疑念
靴を履き忘れたことにも気づかず、私は走る。
ただひたすらに、
自分を守ろうと、必死に。
「間に合えっ………お願いっ」
そんな、私の願いも虚しく。
マイギターがある屋上には、黒龍たちと伊織がいた。
「…芹那ちゃん!」
焦ったように私を呼ぶ伊織と
「芹那っ!」
これまた焦ったように私を呼ぶ世那。
「…おい、これ……」
その沈黙を破ったのは、近藤だった。
「…な、何かの間違いだよっ、ねぇ、世那?」わかりやすく慌てる伊織。
「そ、そうですよね、伊織さん」
それにぎこちなく合わせる世那。