伝説に散った龍Ⅰ









「――おはようございます。午前五時、『News Morning』の時間になりました。



今日は、12月25日、クリスマスですね。
なのでこのスタジオもクリスマス仕様です、どうでしょうか皆さん」








午前五時。



一年を通しても特別目立つイベントであるクリスマスを迎えた今日、
日本の朝は呑気に聖夜を報道している。



毎年のことだが。
















事件だの事故だの、毎日何かしらは起こっているのだからそちらを報道せよと。



心の中、皮肉めいた独白が反芻する。




























――しかしそれでも、どこかでその光景を羨ましく思っている自分がいるのも事実で。



目を背けていたい、しかし浸っていたい。
そんな現実ばかりが目に入る今日は
























――街が、世の恋人たちで溢れかえるクリスマス。



二年前の今日までは液晶の中で輝いていた私にとっては
“クリスマス”なんてものはただのイベントのひとつに過ぎず。



学校で友人たちと『クリぼっちだ』と笑いながら、それでも恋人すら必要ないと思っていた。

























だって
私の周りにはみんながいた。



あいつらも、家族も。
















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