伝説に散った龍Ⅰ
暴走族、ってものに。
あまりいい思い出はないから。
「…っ芹那。そうやって、逃げんのか。また現実から目ぇ背けんのか。
俺も、芹那には謝んなきゃいけないことがあるし、こんなこと言える立場じゃないけど、
けど弟だから。
そんな芹那は、やっぱ見たくねえ。
逃げてるだけの芹那なんて、
俺は知らない」
…っ。
世那には、やっぱ適わない。
だってほら。
ーー言い返す言葉が、見つからないんだから。
「ねえ、芹那ちゃん。覚えてる?
…芹那ちゃんさ、助けてくれたよね。私たちがまだ名前も知らなくて、入学したてだった時。
あの時の芹那ちゃん、すごくかっこよくてね。
強い子だな、って思った。
でも、強い、ってことは
ーーこの子はほかの子より色々我慢してるんだろうな、って。
そう、思ったんだよ。」
伊織は一文字ずつを、噛み締めるように話す。
「何が言いたいの「だぁかーらー」…」
その声は、怒っているような、泣いているような。
そんな、感情の入り交じった声だったように思った。