伝説に散った龍Ⅰ
「芹那ちゃん優しいから、私を守ってくれようとしてるのはわかる、分かるよ。
だけど。
強さにこだわらなくたっていいんだよ。
弱さ見せたって、それは負けたことにはならない。
私がいる、
守られてばっかじゃ嫌だよ。
たまにはさ、私だってカッコつけてみたいんだからね?
…泣きながらさ、
私の胸に飛び込んでみてよ。
縋ってよ泣きついてよ。
全部、全部………さらけ出したって、私は芹那ちゃんの味方だよ?
信じて。
芹那ちゃんを、私も信じるからさ。」
伊織は、そのこじんまりとした体の前、
細い両手を、目いっぱいに広げてみせた。
まるで私に、
「飛びこんで」とでも言うかのように。
そして…その口元に、
柔らかい、笑みを浮かべた。
「伊織…っ」
小さく呟いて、
そっと伊織に歩み寄った私。
私より小さく見えた伊織は、
なんだか意外としっかりしてて
一年の時とは違うんだな、って
ーーそう感じた。