伝説に散った龍Ⅰ
「素直じゃなくてごめん、強がりでごめん、すかしてて…ごめん。
冷めてて、ごめん。
あと、
距離、置くなんて言っちゃって、ごめんねっ。」
哀しくて、
嬉しくて。
それでも頑なに涙を見せようとしない私に、
「うん、うん」と、伊織は優しく話を聞いてくれていた。
その時、黒龍たちが私たちをどんな目で見ていたのかはわからない。
ただ、一瞬。
それまで瞑っていた目を、本郷たちの方へ向けた。
すると、本郷は、
つられたように空を仰ぐ。
私も目を向けてみればそこには、雲ひとつない青空が広がっていた。
胸の中のわだかまりが、少しだけ、軽くなった気がした。
…のは、
ーーきっと気のせいだったのかもしれない。