伝説に散った龍Ⅰ





滞った雰囲気に耐えられなくて、そう切り出す。



全員が座ったのを確認して、私はそっと瞬きをした。



なんだか落ち着かなくて、
それを自分に言い聞かせるように
深呼吸。



まだ、慣れない。
この、空気に。



「世那。
私、ね。



正直言って、今が楽しい。
どの過去と比べたって、私にとっての今が、すごく幸せに感じてる。



ただ。
暴走族、っていうのは、やっぱり
なんかね、違うんだ」



思ってたのと、結構ちがくて。



上手く、言葉が繋げない。



私たちは、いつから、
いつから姉弟じゃなくなった?



唯一の肉親と話すのがこんなに辛いなんて



…悔しい。
それ以上に、自分が憎い。



「なぁ芹那」



ーー芹那には、俺の知らない過去が、あるんだよな…?



口は勝手に動く。
「ないよ、そんな大それたもの。」



嘘つかないで。
あるでしょ、



世那にも諒二にも絶対言えないような、膨大な、過去。



< 68 / 113 >

この作品をシェア

pagetop