伝説に散った龍Ⅰ
IV/past
「しっつけえな!
俺は、お前とは付き合えねぇって言ったろ!?」
柚の、声だ。
柚の髪の淡い青、
夜空の濃い青、
遥かに違うであろう二つの色が、
何故だろう、重なって。
グラデーションカラーを生み出しているような、そんな気がした。
「どうしてよ!私は柚しか見てない!
柚しか、見えないの!私には、柚しかいないっ!!
こんなに、こんなに好きなんだよっ?
あたしじゃダメって?ねえ、柚!!
…、あの時のこと、なら。
私が謝るよ、ごめんって!
何回だって、謝る!
だから、ねぇ!柚!
柚ってば!!」
迷惑そうに言う柚に対して、反対に、そんな柚に必死に縋りつくように話す一人の女の子。
風になびくのは、艶やかな黒髪。
切れ長の、大きな目。
つやっぽい唇に、シャープを描く輪郭。
一言で言えば、
まさに、「綺麗」。
その辺にはめったに居ないような、そんな子だった。
その綺麗な顔にも、少しばかりではあるが化粧が施されていて。