愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
まだ遮断機が上がっていないのに、女の子は踏切に向かって歩き出した。
女の子は前しか見ていない。
「…え」
目の前で起きていることに、驚いて動けない。
でも、視線はちゃんと女の子を追っている。
踏切の警報音も聞こえている。
電車が近づいてきているのも、わかっている。
「何、何、何…」
さっきまでいなかった周りの人たちの声が聞こえ、ハッとした。
「うそ…やだ、自殺?」
¨自殺¨
その言葉に、意識がハッキリとした。
今、目の前で起こっていること。
キキ―!!
電車の警告音と、ブレーキ音が響き渡る。
女の子は、線路の真ん中へと歩いて行ってしまう。
「ダメーーーーーー!!!!」
咄嗟に出た大きな声と、勝手に動き出した身体。
猛ダッシュで線路の真ん中に立つ女の子の元に向かう。
「きゃー!!!」
周りから悲鳴が聞こえる。
こんなに周りが騒いでいるのに、女の子は顔色ひとつ変えていない。
ドクン、ドクン。
過去の自分を見ているように感じた。
女の子の腕を思いっきり引っ張り、身体を引き寄せた。