愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
カンカンカンー…
「はぁ…はぁ…」
踏切の警報音は、鳴ったままだ。
目の前には、電車が止まっている。
腕の中には、女の子ー…
「はぁー…」
良かった。
間一髪で、線路脇に避けられた。
「大丈夫か!?」
周りにいた人たちが駆け寄って来た。
「すごい行動力だね!!ビックリしたけど、二人とも無事で良かった!!」
「お姉さん若いのにすごいな!!」
色んな人に声を掛けられ、生きていることを改めて実感した。
「…大丈夫?」
腕の中にいる女の子の顔を覗き込んだが、目が合わない。
「助けてもらっておいて、お礼も言わないのかよ。電車も止めておいて、どれだけ迷惑かけたかわかってんのか」
「!」
一人の男性の言葉に、女の子の身体がビクっとした。
「やめなさいよ!!無事だったんだから、良かったじゃない!!」
男性の連れの女の人が言い返した。
そう…無事だったから良かった。
けど、あの男性の言葉はさらに女の子を追いつめたように感じた。
女の子は自分から離れる様子もなく、力なく身体に収まっている。
だから、警察が来るまではそのままにした。
今、この子を離してはいけないような気がしたからー…