愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
あの後すぐに、警察と救急車が来た。
そして何故か、私も女の子と一緒に救急車に乗せられ病院まで来た。
「櫻井!!」
「圭吾くん!どうしてここに…」
診察が終わり待合室で会計を待っていると、圭吾くんが走って来た。
「お客さんから、踏切で事故があったって聞いて…しかも、それがうちの店員じゃないかって聞いて…」
上がった息のまま喋る圭吾くんの額からは、汗が大量に出ている。
「どこも怪我してないのか?」
じっと見つめられる。
「はい…ちょっと、腕を擦っただけで…」
よく顔を見てみると、顔が青ざめているのわかった。
「はぁー…良かった。本当に…」
そう言うと、その場に座り込んでしまった。
「!」
慌てて、しゃがむ。
また、圭吾くんに心配かけちゃった…
「…本当は抱き締めて無事を確認したいけど、いま俺汗だくだからダメだな」
俯いたままそう言った圭吾くんの身体は、少し震えている。
踏切で事故って言ってたけど、本当は自殺だって聞いていたんだと思う。
だから、こんなに汗だくで走って来たんだ。
ここに来るまでに、どんな気持ちでー…
「…心配かけてごめんなさい」
そっと、しゃがみ込んだ圭吾くんの身体を抱き締めた。
「櫻井、俺…汗…」
「いいんです…ごめんなさい」
心から、圭吾くんに謝った。
「…無事で良かった」
そう小さな声で圭吾くんは言うと、身体を抱き締め返してくれた。