愛されたい、だけなのに。〜卒業から少し経ったお話〜
「あんたはこんなに迷惑かけて!!何考えているのよ!!」
パチン!!!
「!?」
診察室の中から大きな声と、何かを叩いた音が聞こえた。
ビックリして、圭吾くんから身体を離した。
「何…」
ゆっくりと立ち上がり、大きな声がした診察室の方向を見た。
圭吾くんも立ち上がり、同じ方向を見た。
しばらくすると、診察室の中から警察の人が二人出て来た。
「あ、櫻井さん」
私と圭吾くんに気付いた警察官が、声を掛けて来た。
「こちらの方は…?」
ドキ。
一人の警察官が圭吾くんを見て、そう聞いてきた。
こちらの方はって…元担任?保護者?
「えっと…」
何て言っていいかわからず、オロオロとしてしまう。
「マナの恋人です」
ドキ。
恋人ー…
しかも、今…マナってー…
隣にいる圭吾くんを見上げると、警察官の人と真っ直ぐ向き合っている。
「そうでしたか。櫻井さん」
「!はい!」
ぼけーっとしてる場合じゃなかった!
慌てて、顔を前に向けた。
「今回は、二人とも無事で良かったです。しかし、あと一歩遅かったらあなたも巻き込まれていたかもしれません」
ドクン。
「…はい」
警察官の人にそう言われ、今になって怖くなった。
「これからそういうことに気付いた時は、すぐに通報してくださいね。恋人にも心配かけないように」
「…はい」
「後、助けた女の子のお母さんが一言お礼を申し上げたいと言っていたので、もう少しお待ち頂けますか?」
警察官がそう言ったのと同時ぐらいに、診察室の扉が開いた。
「あ、夏目さん。こちらです」
警察官が診察室から出てきた女の子と、そのお母さんに声を掛けた。