俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
そんな話をしていたらあっという間に兄貴が店に入ってきて、黄色い声援が飛ぶ。
ほんと、人気あるよなぁ…
隣の俺の彼女は相変わらず静かだけど。
「…なんか、複雑」
「え?なにが?」
「…大きな声じゃ言えないけど
なんかもうASAHIくんってより
碧翔のお兄さん、にしか見えなくなってきた…」
「え、なんだそれ」
「いやでも好きなんだけど、好きー…ってなんか言いにくいな」
「ま、でもそうだよな
彼氏の身内って知っちゃうとそうだよな」
「でもかっこいいにはかっこいいんだけどね、やっぱり」
そんなこと話しながら俺らの番号が呼ばれるのを待って、
俺らの番が来たら俺はまた普通に買い物。
別に兄貴に接客されようとか全く意識してないからか
いっつも俺はみんなと離れたところにいる。
そのせいなのか、逆にそれが目立つのか
「碧翔また来たのかよ…」
まーた兄貴に見つかった。
「いやだって
母さんが彼女連れて来いっていうから会えるか聞いたら
イベント行くーとか言うから」
「あ、今日結局連れてくるんだ?
父さんも知ってる?」
「母さんには言ってあるから、母さんが父さんに言ってれば知ってるかな」
「ふーん、じゃあ俺も早く帰ろ」
そんなことを言って、兄貴は違う客のところにむかった。
って、あれ?涼すけー…
「…って、なにしてんのそんなとこで」
「いやなんか…なんかどうしたらいいかわかんなくなって」
「いや別に全然いつも通りでいいよ」