俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
そっからはまぁ一時間とまではいかないけどそこそこ並んで、整理券も受け取って、これで動いてOK!なわけだけど、俺らはここで座って待機した。
なんていうか…動くのがだるいってのもあったんだけど
今まで涼すけとこんな風に2人きりになることもほとんどなかったし、だからこんなに会話をすることもなかったけど
改めてこいつと話してるのが楽しくて……
もっと、こいつといろんな話をしていたかった。
どこかでなにかするよりも、こいつのことを知りたかった。
だから17時なんてあっという間になっていて
気づけば、もう俺らはショップの前の取り巻きの一部と化していた。
「……なんなんだよ、これ」
「もうすぐASAHIくんが来るの!!」
といった瞬間、向こうから黄色い声が飛び、そのあとすぐに見慣れた男が姿を見せる。
その姿に騒ぎまくる女たちだけど、意外にも涼すけは静かだった。
「……お前は他の子みたいに騒いだりしないんだな?」
「前に雑誌で好きな女の子のタイプ聞かれてて
物静かで気配りできる子って書いてあったから」
「へぇー…」
で、それをちゃっかり目指しちゃってるわけね?
……けっこう…ガチ、なんじゃん。
朝陽を見るお前の目だとか、その声のトーンだとか
醸し出されるその恋する女の子のオーラ。
そんなお前の目線にはキラキラ輝いて見える高身長の俺の兄貴……
……なんだよ、勝ち目ねぇじゃん。