俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。



……ってか俺、いくらもってんだろ。
そういや母さんが用意してくれた封筒の中身見てねぇ…

まぁでも、服を買いに行くっていったからには恐らく2万…ってとこかな。
まさか兄貴や飛鳥にホイホイ金使ってて俺にはケチってちょっとしか渡さないなんてことないだろうし…

と封筒の中身を見れば諭吉が3人。


……いつもより多い…!!母さん感謝!!

あれ、なんかメモが……


『ついでに帰りにトイレットペーパーも買ってきて』


・・・さゆりさんに頼めや!!
こんなに金もらってたら断れないだろ、くそぉぉ!!


「碧翔、なにやってんの
時間なくなっちゃうよ」

「あぁ、はいはい」


まぁ金だけ取り出して財布に移し、30分と限られた時間で俺は服を選ぶ。

とにかく絶対必須なニットから。
それとパンツと、なんならコートも……

と次から次へと手が伸びていく


「……碧翔、そんな買うの?」

「まぁそりゃせっかくだし。
俺あんま服買わないからこういうときにごそっと買うんだよ」


飛鳥はよく買ってるからそこから俺がパクるだけ。あと兄貴の服も。

ただ飛鳥とは骨格がほぼ一緒だからいいけど、兄貴は手足が長いから、パンツ類はまったく借りられないけど。


とりあえずニット2枚にパーカー1枚、パンツ1枚を袋の中に入れて、残りが10分。

あ、このコートいいなと手に取ると

「お客様はそのコート、あまりお似合いにならないと思いますよ」

……なんだか、すごくむかつく発言が後方から聞こえた。


「あ、碧翔碧翔っ…!」


隣の涼すけはやけに黄色い女の声を出してるし。


「……普通店員は客に対してそんなこと言わねぇだろ」


顔なんて、見なくてもわかる。
何年も一緒に生きてきた。今さら、声とか喋り方とか、間違えたりしない。


「買われてからでは遅いので。
おきに召さずに着なくなっては、この服も可哀想ですし」


そういって俺のとなりにくる、俺の兄貴。
涼すけなんて興奮しすぎてじゃっかん離れてるし。

好きなら近くくりゃいいのに。


「それに…」

兄貴はそういって、俺に顔を近づけた。

「そのコート、7万するけど。
碧翔、そんなに金あんのかよ」


・・・7万!?たっか!!
……無理だ。やめとこ。


「ってかなんでここにいんの
わざわざ並んで俺に会いに来たのか?」

「……うるせ。これも付き合いなんだよ」

「あぁ、そこの女の子、俺のファンだもんな
何回か見たことある」

「へぇ…そういうのは覚えてんだ」

「俺はなんでも覚えてるって」


そういって、俺の手から買い物袋を奪った。


「ありがとうございまーす」


・・・強制終了。



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